中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

『道路整備事業の大罪』

 この本は一週間以上前に読み終わっていたのだが、他の話題での投稿が相次いでいたため、ついつい後回しになっていた。記憶が薄れないうちに、この書籍の紹介と、感想を記しておきたい。

 当初著者が考えていた題名は、「道路をつくると地方は衰える」であった、とのこと。私個人としては、この題名の方がすっきり来る。自分の周りでも、「車社会」の本格到来と、道路開通によってむしろ衰退した事例を、よく見聞きしている。

 例えば、明石大橋開通に伴い近畿圏に人が流出した徳島県東海北陸道開通によって「宿泊・滞在客」が減少した下呂温泉など。

 麻生政権時代の「高速道路1000円」や、それに輪をかけて実施しようと言う「高速無料化(事実上、頓挫しているが)」、さらにはエコカー減税、まだ噂話の域を超えていないが「自動車教習所無償化」など、昨今の政策は「自動車の使用」を奨励しているように見受けられる。

参考ブログ)エイプリル・フールネタ?『自動車教習所無償化

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-aeca.html

 これは、「消費支出の促進」という観点のみならず、わが国の雇用を支えている自動車産業を下支えしよう、という思惑もあるのだろう。しかし、グローバル競争で揉まれてこそ真に強い産業と言えるのであって、これを国が下支えすることに、たびたび疑問を呈してきた。

参考ブログ)

自動車産業を支えることは是か?』 2009年4月12日 (日)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-09f8.html

『「Policy to help」でオール一次産業化?』 2009年12月31日 (木)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/policy-to-helpa.html

と、いったことを前提に、本書を読み進めてみた。

 「道路をつくると地方は衰える」の代表例として筆者がまず挙げたのは、「アクアライン」開設に伴う千葉県木更津市の事例。そもそも神奈川県川崎市と千葉県木更津市とをつなぐ「アクアライン」は、一日の交通量を3.3万台と予測していたが、開業直後の1998年は一日あたり1.05万台と予測の3分の1未満、通行料金を25%引き下げた2001年も1.3万台と半分にも満たなかった。

 そして何より問題なのは、「アクアライン」開設後の木更津市の人口は10年間でやや減少(12.3万人から12.2万人)した上、木更津駅前のダイエー、そごう、西友が次々と撤退、地価下落率が3年連続日本一と言う悲惨な状態を招いたという。

 このように、「地方に豊かさをもたらす」ことを期待して、道路を開通させたもかかわらず、道路開通によって地域商業はむしろ衰退したという事例は、枚挙に暇がない。群馬県南牧村は道路開通によって地元店舗が激減し、「交通手段」、「買い物」に不自由する高齢者が増えているという。

 また、かつては「企業を誘致して若者雇用を創出する」、という名目で道路整備が促進されたが、これが適用できるのは高度経済成長の時代の話。1978年に道央自動車道の苫小牧東インターチェンジが開業したが、同地域で用意した用地面積に対し、95年時点で進出契約を結んだ企業は2割未満、出荷額に至っては当初見込みの3%と未満だという。

 ましてや21世紀の現在に至っては、「道路が整備されていないから、地方の工業団地に企業が進出しないのではない。(中略) 道路が整備されても企業の立地が期待できるのは中国であって、現在の日本ではない。」という厳然たる事実を無視して、「道路整備で企業誘致」を夢見ることはあってはならないだろう。

 著者は本書において、米国のロスアンジェルス、ブラジルの首都ブラジリアなど、「脱・モータリゼーション」に転換している世界各国の都市を紹介している。ロスアンジェルスは、「交通手段は自動車のみ」で都市が発達した結果、渋滞は悪化の一途を辿り、これを打破するために公共交通の導入に力を入れ始めているという。

 ブラジリアは当時の都市計画化が理想と思う要素を盛り込んだ、自動車優先型の都市として建設された結果、歩行者が歩くのはほぼ不可能、ビルからビルへの移動も広大な駐車場を歩いていかなくてはならない、という悲惨な状況に陥っていると言う。

 こうした事例を元に、筆者は道路整備がもたらす負の側面を整理している。

1.自動車への過度の依存体質がもたらす、移動の不自由

 ・・・ 現在の公共交通機関が次々と廃線となっている状況を見れば、明らかだろう。

2.商店の喪失など生活環境の悪化

3.コミュニティの空間的分断と崩壊

4.子どもの遊び空間の喪失

 ・・・ この項で面白い記述があった。千葉県浦安市のママたちは、東京ディズニーランドを子どもの遊び場として利用しているという。その理由でもっとも多かったのは、「自動車の心配をせずに子どもたちを遊ばせることができるから」とのこと。

5.自動車優先型都市構造がもたらす非効率性

 ・・・ 自家用車での移動は、公共バスの3倍、鉄道の5倍以上のエネルギーを要するという。バスや鉄道の乗車率が減れば、エコの観点からも望ましくない。

6.失われる風土と地域アイデンティティ

7.観光拠点だった場所が通過地点になることで生じる観光業の衰退

8.家計への負担増大

 ・・・バカにならない自動車維持費。若者を中心に「クルマ離れ」が進行するのは当然のこと。

といったこと踏まえ、後半の章では「脱・モータリゼーション」に方針転換し、「歩行者中心の街づくり」に成功した国内外の事例をいくつか紹介している。

 著者も指摘しているように、「自動車が豊かさの象徴であった時代」は、少なくとも先進国では過ぎ去りつつある。

 前述したように、若者を中心に「クルマ離れ」が進行するのは不可避のことであり、今さら「モータリゼーション」促進のために手立てを講ずるのは、時代に逆行していることといわざるを得ない。

 本書が指摘しているように、「脱・モータリゼーション」による都市づくり、街づくりを行うことが、「歩行者」、「交通弱者」に優しい地域づくりにつながり、「真の豊かさ」の創出、さらには「地球に優しい」国づくりにつながるのではないだろうか。

 ね、「CO2 25%削減」を掲げた鳩山さん?

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