中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

サムスンに学ぶ。

 昨年からの「ネットブック」ブームによって、日本国内でも一気に知名度を上げた台湾のPCメーカーAcer(エイサー)が、何と世界シェアで2位を獲得した。

 2009年10月15日の網易科技によると、「米国のIT市場調査会社IDCによる今年第3四半期の世界PC市場に関する調査報告から、PC出荷台数で台湾のエイサー(Acer)が初めて米デル(Dell)を抜き世界第2位になったことが分かったとロイター通信が報じた。1位は依然として米ヒューレット・パッカード(HP)だった。」とのことだ。

台湾エイサーが米デル抜き世界2位のPCメーカーに―米調査
10月16日14時47分配信 Record China

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000016-rcdc-cn

 本日の日経新聞には、エイサーグループCEOの王振堂氏のインタビューが掲載されていた。記事によると、エイサーは生産を外部委託し中核技術は持っていないが、「決断の早さ」が最大の強みとなっている、とのことだ。幹部の数を最大5人にするなど組織を簡略化し、消費者の要求に対し、素早い決断で応えていることが、現在の躍進の原動力となっている。

 ここ最近、「日本企業は技術で勝って、なぜ経営で負けるのか?」をテーマにした書籍をいくつか読んで、そのポイントをブログに書き記しているが、今回は「日本企業に技術で負けて、経営に勝つ」企業側の本を読んでみた。

参考ブログ)

『ものづくり敗戦』 2009年7月29日 (水)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html

『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』-2 2009年8月15日 (土)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

世界不況を生き抜く 新・企業戦略 2009年9月23日 (水)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-33fe.html

 日本企業に「技術で負けて経営で勝つ」企業の代表と言えば、何といっても韓国のサムスン電子(以下、サムスン)である。2006年の統計によると、サムスンはエレクトロニクスのグローバルシェアにおいて、液晶テレビ、VTR、DRAM分野で世界第一位、ブラウン管テレビ、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機分野で第二位、プラズマテレビ、DVDレコーダー、エアコンで第3位を勝ち取っている。

 9月20日に発売された『危機の経営』は、「失敗学」で有名な畑中洋太郎氏と、かつてサムスンで10年間常務理事を務めた吉川良三氏の共著だ。吉川氏が、かつて経営危機に陥ったサムスンが大躍進を遂げるまでの要因を、内部にいた人間だからこそ知りうる情報も交えて、的確に分析しつつ、畑中氏がさらに俯瞰的な視点で分析をする、という体裁をとっており、非常に興味深い内容となっている。

以下、「へぇ~」と思った点を抜粋。

・日本のものづくりは、確かに今も「高い技術力」を売りにしているが、技術の定義を「社会から求めていることを実現するための手段」と考えた場合、「世界のどこの市場でも、最も選ばれているわけではない」という現実がある。まず考えるべきは、「新興国用に売る製品を作る技術」が、われわれに本当にあるのか、ということ。

・日本の多くの企業が、「自分たちは技術力がある」と思い込んでいることは、一種の傲慢である。サムスンや(20万円台で乗用車を販売した)タタ自動車のような、新興国市場向けの安価な製品を、ビジネスを成立させることも含めてつくる技術力は、今の日本企業にはない。そのことを、私たちは謙虚に認めることである。新興国市場への進出は、決して「安ものをつくること」ではない。

・技術力で劣るサムスンが世界市場で優位に立つことができたのは、記述のキャッチアップが速い上に、その使い方が上手いからである。本当に「その地域の消費者が求めていることを形」にするため、「地域専門家」は徹底的にその国に入り込み、文化や人の好み・考え方の深いところま理解することで、戦略的なマーケティング活動を展開できるのである。

・「世界中でほぼ同じものを売る」というやり方は、経済力のある一部の先進国の消費者には通用するが、これでは本当の意味でのグローバル化に対応しているとはいえない。その地域の消費者が本当に望んでいる要素を備えている製品を提供するのが、真のグローバル化である。

・海外でビジネスを成功させるためには、きちんと現地に行って、その場所の文化を知ることまでを含めた現地調査が大事。日本流の「良い物をつくれば売れる」というやり方では、世界市場で生き残っていくことは難しい。

・日本のものづくり企業は、性能で勝負してきたこともあって、どこの会社も生産現場の声が強くなっており、材料や性能にこだわるあまり「過剰品質」になって製造コストが必要以上に高くなっている。

・「品質」とは、「性能」「機能」「デザイン」「サービス」など、「『価格』以外の製品の関わる属性すべて」である。「品質」と言えば、「モノの品質」しか取り上げない日本の考え方は歪(いびつ)である。

・デジタルものづくりの時代、モノ中心のイノベーションは、利益の源泉にならない。多種多様な人たちが集まっている市場の一つ一つの声に、真摯に耳を傾け、それを製品化させたことが、サムスンの躍進につながったのである。

サムスン会長は「人の心を動かすのはデザインである」といった。例えば同じテレビでも多種多様なデザインの製品を用意することが、世界トップレベルのシェア獲得を誇る、原動力の一つとなっている。

・「自分が生き残れるのかどうか」を突き詰めて考えるのが、本当の危機意識。「今回の不況はいつ終わるのか?」などと質問する某大企業の役員は、「景気が回復すれば自分の会社の業績も持ち直す」という思考回路をもっており、本当の危機意識を持っているとは言えない。 

 といったように、新興国の中間層が圧倒的な「ボリュームゾーン」として成長することが見込まれる今後において、日本の家電メーカーや自動車メーカーが”サムスン流”に学ぶ点が相当に多いのは間違いない。もちろん、躍進著しいサムスンもアキレス腱がないわけではない。『ソニーVSサムスン』によると、3つの内在的な危機を指摘している。

1.少数の経営者が誤った判断したときに、けん制すべき手段がない、「行き過ぎた中央集権」。  

2.組織の疲労度が蓄積している上、「恐怖経営」とまで呼ばれる企業文化がある。

3.想像力の不在。サムスンは、後発者としての利点を十分活用し、模倣と学習を通じて発展してきたが、自らがリーダー企業となって産業をリードし、技術を引っ張り革新的な企業経営方法を考案しなければならないが、それを担う人材が不足している。

 いつかは、これら内在的な危機が顕在化し、サムスンが曲がり角を迎えるときが来るかもしれない。そのときが日本企業の底力の見せ所だろうが、少なくともその時期が到来するまで、生き残って行かなくてはいけない。そのためにも、サムスンから学ぶことは多い、というのは間違いないだろう。

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