中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

「終身雇用は日本の文化」という欺瞞

 ITバブル崩壊や格差社会が問題視されるようになった時期、トヨタの業績が当時は良かったこともあって、「日本的経営」を再評価するという声が再び高まり、そうした中で「終身雇用は日本の文化だ」、「年功序列は日本人の心情にあった、良い制度だ」といった意見が、再び幅を利かせるようになった。

 小渕内閣の首相諮問機関「経済戦略会議」に竹中平蔵らとともに参加するなど、1990年代に構造改革推進の立場から政策決定に大きな影響力を持った中谷巌氏は、こうした世の中の空気を巧みに察知してか、今までの持論を翻して、しらじらしくもこう述べている。「戦後、人々に共同体的な関係を提供したのは「会社」であった。終身雇用や年功序列という制度は人々に安心感を与え、会社への忠誠心を醸成した。」、「成果主義が格差の拡大を正当化し、株主重視の経営が主流になった結果、会社も従業員の精神的よりどころではなくなった。」

『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』 (中谷巌 著)

※ちなみに私は、彼の印税収入に貢献などしたくはないので、上記の図書は購入せず、下記の記事から引用している。念のため。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/259176/

 では、「終身雇用」に守られ、「年功序列」の中で生きてきたサラリーマンたちは、「終身雇用」の恩恵に与れない今の若者たちと比べて、会社への忠誠心が高く、慈愛(今流行の友愛?)に満ちた行動をとっているのか?一つの答えがJALにある。

 JALが経営危機に陥っている要因の中で大きなものの一つとして、年金債務がある。この問題を解決するには、支給額を減額するか確定拠出に切り替えるしかなく、それには受給者の2/3以上の同意が必要なのであるが、池田信夫氏のブログによると、JALのOB、9000人の受給者のうちすでに3580人が「年金支給の減額に反対する」署名を行っており、すでに減額は不可能な状況に陥っているという。

2009-10-01 池田信夫 blog 『経済成長というゲームの終わり』

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/7d6a4547b19c2abe298aa7f8b18809b5

 池田氏が指摘するとおり、「企業を卒業したOBには企業に忠誠をつくす理由がないので、徹底的に自分の利益を追求するのだ。」というのは至極もっともな話だ。しかし、仮に彼らが「終身雇用は日本の文化だ」、「終身雇用は日本人の心情に合っている」と主張するとすれば、それはまったくの欺瞞に過ぎない。

 21世紀初頭、同じように経営危機に陥った松下電器(現パナソニック)においては、「創造と破壊」のスローガンーのもと、中村邦夫社長(当時)がOBの猛烈な反対を押し切って企業年金の利率引き下げを断行した。この改革なしに、今のパナソニックの繁栄はありえなかったであろう。

 今後も、終身雇用を維持してきた大企業においては、年金債務が大きくのしかかり、JALや松下同様に、企業年金の引き下げが求められる事態が、大いにありうるだろう。そうした状況の中、果たして「終身雇用」の恩恵に属してきた人々は、「会社に忠誠」を尽くし、後進への思いやりの心をもって、自らの不利益を享受できるだろうか?「終身雇用」制度の真価は、その時に問われると言ってよいだろう。

追記;

 『日本型経営』を賛美する人々は、とかく懐古主義的・情緒的で、その実は信用ならない、ということが言いたかったわけだが、その代表例のような発言が今日あったようだ。

 亀井静香金融・郵政担当相は5日、東京都内で行われた講演会で「小泉改革に便乗して日本型経営を捨てたことが社会をおかしくした。」、「日本で家族間の殺人事件が増えているのは、(大企業が)日本型経営を捨てて、人間を人間として扱わなくなったからだ。」と発言して、経団連の御手洗会長を閉口させたとのこと。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091005-00000108-mai-bus_all 

 ここまでくると、もはやギャグの粋だが、現役の国務大臣がこれでは・・・。

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