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中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

世界不況を生き抜く 新・企業戦略

 門倉貴史氏の本は、今までにいくつか読んできたが、『ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る』や、『ホワイトカラーは給料ドロボーか?』といったヒット作があることから、私は彼を「雇用問題の専門家」だと思っていた(蛇足だが、「ワーキングプア」という用語は、この著書から広まったのではないだろうか)。

 そんな彼の最新作、『世界不況を生き抜く 新・企業戦略』は、エコノミストとしての彼の本領発揮された好著である。「雇用問題」からしか語れない城繁幸氏や、的確な現状分析は出来ても具体策となるとサッパリの野口悠紀雄氏に物足りなさを感じていたが、同書は、マクロ経済や産業構造を俯瞰しつつ、ミクロの事象まで目が行き届いており、世界的不況の分析から日本経済の立ち位置、さらには今後日本企業はどう歩めばよいのか、具体的に、それも客観的事実から導き出された根拠ある提案となっている。

※ちなみに、城繁幸氏の限界については、下記の投稿を参考のこと。また、野口悠紀雄氏は、最新作『未曾有の経済危機 克服の処方箋』で、的確に世界と日本を取り巻く経済危機の分析をしているものの、具体策が『自己投資が大切だ!』、『MBAを取得せよ!』と、見事なまでに肩透かしを食らってしまう。

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-e9ec.html

 話は戻って、昨年のリーマンショックによって日本経済は著しく打撃を受けた訳だが、現政権の民主党も含めて、「日本経済がここまでダメージを受けたのは、行き過ぎた外需頼みが原因だ!輸出産業主体の外需頼みから脱却し、内需拡大を推し進めるべし!」と言った意見は多い。

 しかし、門倉氏は同書で、「これから間違いなく日本市場は縮小する。”外需頼み”が悪なのではない!良くないのは”対米偏重”、すなわちアメリカ市場に頼りすぎたことであって、これからも日本は輸出産業を強化して、真の意味でグローバル化を推進せよ!」と主張する。

 同氏は2005年にBRICs経済研究所を設立しているが、こうしたバックグラウンドを活かして、具体的データや客観的事例を的確に交えつつ、「では、今後どの市場を狙うべきか?」、を的確に挙げている。

 同氏は本書の中で、有望な消費マーケットを見極める5つの要素として

1.人口規模は大きいか

2.人口増加は続くか

3.1人辺りGDPが一定レベルに達しているか

4.購買意欲が旺盛な中産階級が台頭しているか

5.新聞・雑誌・テレビなど、メデェイアが広く普及しているか

を挙げ、その代表として例えばアジアなら中国、インド、ベトナムインドネシアを挙げている。そのほかにも、中東ならトルコ、イラン、アフリカはエジプト、南アフリカ、ナイジェリア、そして南米ではブラジルとアルゼンチンを挙げ、各国の現状と今後についてわかりやすく解説がなされている(ただし、あくまで経済状況と産業が主題であるため、宗教や文化、政治体制や治安などについては、敢えて踏み込んで記述はなされていない)。

 もっとも現時点では、これらの市場規模を合計しても現時点では米国1国の半分に過ぎず、かつ経済基盤も脆いので、長期的には成長しても短期的なリスクは十分ありうる点を、忘れずに言及している。

 そして有望な分野として、「新幹線」で名高い高速鉄道のインフラ受注、太陽電池、水ビジネス、原子力発電、地上デジタル放送を紹介するとともに、家電や自動車分野においては「韓国企業に学べ」と提言している。

 具体的には、韓国企業が成功した「新興国市場を攻める4つの戦略」として、

1.まずはマーケットシェアを確保せよ

2.どの階層を狙うか、ターゲットを絞り込め

3.「プロダクトアウト」ではなく、「マーケットイン」を徹底せよ

4.新製品開発や新分野発見で、新たに市場を創り出せ

を紹介している。2.については著者は、中国市場における資生堂を例に挙げ、「日本企業はアッパーミドルや富裕層、ニューリッチ層への特化すべき」とした上で、パナソニックダイキン工業のように、あえて韓国企業同様にローワーミドル層で勝負するのもあり、としている。

 後者については、ちょうど先週NHKの「クローズアップ現代」にて、「”ボリュームゾーン”を狙え!」で紹介されたので、ご存知の方も多いだろう。

http://www.nhk-g.co.jp/program/news_documentary/topics/nd_0070.html

 8月15日のブログで、『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』という著書を紹介し、技術偏重から脱しきれない日本の製造業の弱さを指摘したが、シャープやパナソニックなど動きを見ていると、着実にその弱点を克服しつつある、逞しさを感じさせる。

 長らく雇用を下支えしてきた国内製造拠点は、今後も海外移転の動きは止まらないだろう(少なくとも、これから大規模工場が国内につくられる見込みは薄い)。しかし、今後は(米国偏重ではない)輸出産業のさらなるグローバル化によって、日本経済を牽引していってもらいたいものだ。

参考ブログ) 『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか -2』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

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