中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

城繁幸氏の限界

 城 繁幸(じょう しげゆき、1973年 - )は日本のコンサルタント、著述家。株式会社ジョーズ・ラボ代表取締役山口県出身。東京大学法学部卒業。1997年に富士通に入社。富士通では人事部に勤務し、成果主義を導入した新人事制度導入直後から運営に携わった。2004年に退社し、富士通が行った成果主義の問題点を指摘した本や日本型成果主義の矛盾点を突いた本を書いて話題となる。新卒一括採用や終身雇用反対の立場を表明している。

 出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

 私と同い年で、終身雇用や新卒一括採用に批判的な立場をとってきており、以前から注目していた評論家だ。「中高年のように、下働きの先に昇進も昇給も約束されていない若者が、3年で会社を辞めるのは当然」と、世代間格差を鋭く突いた『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』はベストセラーを記録した。ちなみに、その前の著作で処女作である『内側から見た富士通成果主義」の崩壊』に関しては、余りに攻撃的のため、私はAmazonのレビューでこう記した。

 「私も「若者はなぜ3年で辞めるのか?」を興味深く読み、そこから辿って本書を読みました。「若者は…」の方は、富士通退社からかなりの時間が経過して頭の中も整理されたのか、比較的冷静に世代間をとりまく日本社会の問題が客観的に分析されているに比べ、同書は富士通に対する感情的な記述も目立ち、暴露本の域を出ていないのは確かです。人事部を悪玉としてつるし上げ、中間管理職をあまねく無能と断言するなど、若さゆえの視野の狭さが目立ちます。 」

 そんな彼のブログも時々見るのだが、時としてこの『内側から見た富士通成果主義」の崩壊』にあるような攻撃性や、何でもかんでも「若者VS中高年」の対立構造で物事を見るがゆえの視野の狭さが、時折顔を出すのが気になってはいた。

城繁幸公式ブログ Joe's Labo 『付加価値の低い仕事を残す努力も必要』

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/d617ce2eea8554221dfa00c8be6a504a

 そんな彼が、(私から見たら)とんでもなく的外れで情緒的な意見を発してきた。以下、適宜抜粋。

「シャープが液晶パネル生産ラインを中国に移管するらしい。旧式の第6世代は売却し、第8世代については合弁という形をとるとのこと。メーカーが古い設備を新興国に売り払うのはよくある話だが、液晶パネルの国内生産にこだわってきたシャープでは初のことだ。4月頃からあちこちのインタビューで社長が表明していたことではあるが、あらためて目にすると、うーん…という印象。」

 4月からあちこちのインタビューでシャープの片山社長が表明してきたとおり。そこには今後シャープが生き残りをかけての戦略であることも述べられており、いまさら「うーん」と思考停止に陥っているのは解せない。

「付加価値の高い業務に就ける人間はグローバル化の恩恵を受けられるが、そうでない人間の職は減る一方だろう。グローバリゼーションで格差が拡大するというのはこういうことだ。」

 これは、日本人が望む・望まざるに関わらず進行中の事象であり、当事者ならともかく、俯瞰的に物事を見るべき立場の者であれば、当然現実として認識すべき事柄である。

「そういう意味では、なんだかんだ言っても、トヨタは国内生産比率の高い“日本思い”な企業だった。」

 何を今さら、という感じである。しかし今や(一時的には上向いてはいるものの)、トヨタも3期連続赤字は何としてでも避けがたく、新規雇用には慎重であるし、当然のこととして市場が縮小しつつある日本国内に新たな生産拠点ができる、ということは期待できない(トヨタに限らず、である)。

 「シャープが方針転換した理由はわからない。が、その理由の一つに“日本国内の高コスト”があることはトップも認めている。雇用政策の舵取りによっては、同じように方針転換する企業を増やしかねないというリスクを、新政権は認識すべきだ。」

 リンクにある片山社長のインタビューを呼んでも、シャープが方針転換した理由が理解できないようだ。もう少し、賢い人間かと思っていたが。雇用の舵取りは、多少のバッファーにはなるかもしれないが、アジアのわが国の人件費の差と国内市場の縮小は、いかんともしがたいマクロ的な前提条件である。

「将来景気が回復した際に、日本中のメーカーの製造ラインに再び雇用が戻ってきてくれることを祈りたい。」

 ”将来景気が回復した際に”とは、よくニュースで見る町工場のおっちゃんのようなセリフだ。景気回復は、天から降ってくるものではない。最後には”祈り”まで登場する始末。

『Joe's Labo』 付加価値の低い仕事を残す努力も必要

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/d617ce2eea8554221dfa00c8be6a504a

 こうして考えると、彼は「失われた世代」の代表として、「上の世代からパイを奪うこと」には熱心ではあるが、「どのように日本経済を活性化させるか?」については、実はよくわかっていないのではないか、という気がしてきた。

 人口減に伴う国内市場の縮小と、そもそもの人件費の高さと言う前提を無視して、「雇用問題」・「「雇用政策」という切り口から、それも「世代間の対立構造」で世の中を捉えるという、という彼の限界と感じた次第だ。ちなみに、彼の最新作のタイトルは『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』。上の世代の給与を下げることで、若い世代をもっと潤せ、と言う趣旨のタイトルである。

  参考までに、「雇用の流動化」が成長を促す点については、池田信夫氏が明確に述べている。以下、少し古いが8月18日の同氏ブログから引用しておきたい。

 「成長戦略で何よりも重要なのは、人材である。硬直化した労働市場で優秀な人材が不況業種にロックインされていることが日本の成長率を下げている最大の要因」であるとし、 「民主党後出しじゃんけんで「成長戦略」に含めた子供手当や高速無料化などはすべて1(財政政策)だが、これはゼロサムの所得移転で、長期の成長率を引き上げる効果はない。」と断じている。

池田信夫Blog 

成長戦略」についての混乱 2009-08-18

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/27d28585927503eb0ed0f0313ac2d244

 新卒採用から一度あぶれたら二度と這い上がれない新卒偏重主義や、年功序列主義・終身雇用社会からの脱却など、同氏の掲げる主張には、賛同すべき点は多い。しかし、限られたパイの奪い合いだけでは限界がある。城繁幸氏の限界は、厚生労働省の限界に相共通するものがある。彼はまだ30代半ばだ。勝間和代評論てい暇があったら、もっと謙虚に学ぶ姿勢が、まだまだ必要ではないだろうか。

(2011年1月追記)

 その後の彼のブログやTwitter、インタビュー記事を読んでいると、「硬直化した労働慣行や規制は日本の弱体化に直結している」と充分認識した上で、「日本の産業構造の維持」を前提としない、シューカツ(就活)のあり方や労働法制、社会の仕組みの今後について、提言し始めている。

 従って上記の記事は、あくまで2009年9月現在のこと。

2011年1月16日 (日) 『城繁幸氏に限界なし』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-a484.html

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