中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

電気自動車への移行はスンナリ進むか?

 先日のブログで紹介した書籍『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』によると、

 「ハイブリッドは「従来モデルの延命策」である。しかし「延命策は、実は短命に終わる。なぜなら、「ハイブリッドカーの性能が上がる、ということはそれだけ電気自動車の実現を引き寄せることになるからである」と予測するとともに、

 「ガソリン自動車から電気自動車に移行することによって、自動車は摺りあわせが強みとして生きる「インテグラル型製品」から、パソコンのように組み立てが簡単な「モジュラー製品」になってしまう。ゆえに日本の自動車産業は、あと15年で壊滅状態となる。」と予測、

 もはや、「従来の日本の大企業が得意としてきた「垂直統合型、自前主義、企業群の切磋琢磨」モデルは、通用しない。しかし未だに日本企業は、従来のイノベーションモデルでいくさを仕掛けようとしている。」ことに警鐘を鳴らしている。

 このブログに対してコメントを頂戴した。

 「電気自動車については、10年や20年で普及するとはどうしても思えません。私は東京23区内でマンション住まいで自家用車を所有していますが、マンションの駐車場の場合はまずコンセントがないし、コンセントを設置して各使用者に紐付きで請求できる設備を導入して請求を行い、同時に管理組合の規定も整備する、ということを考えただけで頭が痛くなります(紐付けにしなければ、各区分所有者間の負担の不公平が生じて必ずもめる)。自走式ならまだしも、最近のマンションに多い機械式の駐車場では、充電設備の設置自体が絶望的ですね。

 (中略)また、首都圏や、地方都市でも地下鉄網が整備されているような大都市都心部では、通勤に車を使用しない週末ドライバーがほとんどだと思いますが、この場合、バッテリーの自然放電によるロスがバカにならないくらい大きいと思います。逆に、長距離ドライブが多く毎日使用するような地方では、フル充電で航続距離200kmや300kmぐらいの電気自動車では(常にフル充電していることは非現実的なので)普及が難しいでしょう。」との意見だ。

 今週の日経ビジネスにおいても、電気自動車の本体の開発は着々と進んでいるものの、「充電インフラ整備」がネックとなって、普及は妨げられるのでは、との懸念を示している。同誌によると、「現時点では、積極的に急速充電器を設置しようという動きは見当たらない。普及に当たっては3つの課題がある」とし、具体的に以下の3点を述べている。

1.導入コストが高い。今のところ充電器を1基設置するのに800万円以上の初期投資が必要。

2.充電ビジネスそのものの事業性が低く、ガソリンスタンドのような採算の合うビジネスになりえない。

3.先行して使用している大手企業は使用用途が限られ、急速充電器の必要性を余り感じていない。

 三菱地所では現在2箇所の急速充電器を置いているものの、「企業が使う電気自動車は、夜間に充電ができればいいケースがほとんどなので、法人向けビルはコンセントで十分。」とのことだ。

 同誌によると、「コンビニエンスストアでは設置に必要な高圧電源が店舗にないケースがほとんど」とのことで、ガソリンスタンドのようにあちこちに、という訳には行かなさそうだ。もっとも、「電気自動車、ローソンで充電」、「電気自動車は本年度中に40台導入する計画で、東京や名古屋、大阪の一部地区で、店舗経営指導員が店舗の巡回時に利用する。充電施設は200ボルトコンセントタイプの充電器で、7店舗に設置。順次増やし計25店舗に置く計画。」なんて記事もあるので、コンビニが急速充電のステーションの主役となりうる可能性は大いにあり、と考えられるのだが(ちなみに、ガソリンスタンドとコンビニは、いずれも約4万ヶ所ある)。

http://www.chunichi.co.jp/article/car/news/CK2009080402000208.html

さらに、「将来、電気自動車や電池の性能向上で航続距離が伸びたり、コンセントでの充電が大幅に短縮する技術が開発されたりすれば、急速充電器の必要性が薄れる」とし、その懸念から経済産業省も安易には補助金をつけて設置、というには及び腰の様子。

 となると、「電気自動車や電池の性能向上で航続距離が伸びたり、コンセントでの充電が大幅に短縮する技術が開発」された頃には、本格的な普及があり得るということだろうか。冒頭の「ハイブリッドカーの性能が上がる、ということはそれだけ電気自動車の実現を引き寄せることになるからである」という推測が正しければ、その実現は意外と早くなるかも知れない。

 以上、前置き。ここからが本論。

 気が早い話だが、電気自動車の本格普及が始まると、スンナリとガソリン自動車から電気自動車に移行が進むだろうか?私は、「アナログ放送からデジタル放送への移行」以上に、社会的な混乱が起こると、今から懸念している。

 環境省は14日、「省エネ技術の開発・普及を急ぐことで2050年までに日本の温室効果ガス排出量を05年比で80%削減できる」と分析する中で、自動車のあるべき姿として「電気自動車100%」もしくは「電気自動車50%、ハイブリッド車50%」と設定している。ガソリン使用料が減れば、環境には良いだろが、3兆円強あると言われているガソリン税揮発油税2兆8395億円+地方揮発油税)の税収も、グンと減ることとなる。エコを絶対化して、経済がどれほどの影響を受けるのか、ここで考慮されているとは言い難い。

2050年までに温室ガス80%削減可能…環境省

8月14日22時52分配信 読売新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090814-00001017-yom-soci

 電気自動車が普及するということは、それだけガソリン自動車の利用者が減る、ということだ。そうなると、全国各所にあるガソリンスタンドは次々と損益分岐点を割り込み、閉鎖に追い込まれる可能性が高い。そうなると、ガソリン自動車がかなりの割合が残っている段階で、社会インフラとしてのガソリンスタンドが必要十分な数を割り込でんでしまうのではないか。

 かつて、ガス欠寸前で、ガソリンスタンドを探したときは冷や汗ものだったが、今後は「行けども行けどもガソリンスタンドはなく、あえなくガス欠」、なんて自動車が続出するのではないだろうか。もっとも、特に地方は人口減によってガソリンスタンドの経営が成り立たなくなり、至るところで閉鎖に追い込まれているが、電気自動車の普及は、それに追い討ちをかけることになるだろう。 

 2011年には、デジタル放送終了で、デジタルチューナー付きTVに買い換えられない人たち、すなわち「地デジ難民」が続出すると言われている。自動車は、テレビよりもはるかに高額だ。20年後くらいには、生活の基本インフラとしてのガソリン車が使い物にならなくなる、「ガソリン車難民」が続出するのでは、といった懸念を今からしている(気が早すぎ?)。

 今後も電気自動車の普及について、問題意識を持って注視していきたい。

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